令和4年度地盤工学会関東支部千葉県グループ「蔵玉トンネル拡幅工事見学会」後記
2022.11.17
蔵玉トンネル西側入り口
蔵玉トンネル西側入り口
トンネル内の様子 2022年9月
(見学当時)
千葉県の房総半島を東西に縦断する国道465号にある蔵玉(くらだま)トンネルで行われているトンネル拡幅工事の見学会に参加しました。
このトンネル工事の最大の特徴は「一般交通を止めずにトンネルの幅を広げる」というところです。
トンネルの拡幅工事は、通行止めにして行うのが一般的ですが、周辺に迂回路がなく一般通行を止めることが出来ないため、既設トンネルの中に並べられたプロテクターの中を一般車両が通行する事で、一般車両の安全を確保しつつ、その周囲を掘削して拡幅していくという特殊な方法で施工されることになったそうです。
こうした特殊工法への興味もさることながら、今回印象に残ったのは、調査データによる地盤判断の難しさです。
現地は房総半島中部の上総層群大田代層という、「チバニアン」で有名な国本層の南に位置する地層です。
砂岩泥岩互層となっており、事前に実施した弾性波探査の結果では、脆弱地山と見られるデータだったため、切羽の安定性等が課題だったそうです。
しかし実際に掘削してみると想像以上に地山が安定していたという事で、工事のご担当者様は砂岩中に含まれる細粒分の働きによるものではないか?といった趣旨の分析をされていました。
当然の事ですが、弾性波探査も、地盤の「ある一側面」を数値化しているにすぎず、それだけで「実際の地盤の力」を評価するのは難しいという事が再認識できました。
これを私の実務に置き換えた場合、住宅等の小規模建築物の地盤調査がまさにそうです。
住宅等では経済的な理由等からSWS試験のみで地盤の評価を行うケースが殆どですが、SWS試験で得られる「貫入抵抗値」だけで地盤を評価した場合の「精度」には限界がありますし、可能であれば複数の試験方法を用いて様々な側面からアプローチしてみたいと日々感じています。
文責:株式会社ブラウンワーク 大泉研
カテゴリー|技術者コラム