技術者コラム

 

今月8日、栃木県鹿沼市内で施工中の南摩ダム工事現場見学会に地盤工学会関東支部のメンバーとして参加致しました。

栃木県中央部を流れる思川の支流、南摩川に築かれる南摩ダムの「最大の特徴」は、ダム堤体が施工される南摩川からの流水だけではなく、鹿沼市内を流れる他の2つの川(黒川、大芦川)と水のやり取りが出来るという点です。

地形等がダムサイトに適しているという南摩川流域と、豊富な流量がある黒川や大芦川とを、約9キロの地下導水路でつないで互いに水を融通しあうという計画で、今回は大芦川取水放流工の導水路内部も見学させていただきました。

南摩川と同じく、思川の支流である大芦川は、川遊びや、鮎・ヤマメなどの釣りが楽しめる清流だそうです。

取水工付近の大芦川

その川岸に造られた立抗内部へ工事用エレベーターで降りると、約6キロ南にある南摩ダムの注水工に向かってトンネルが掘り進められていました。

立抗内部から地上方向を見上げた様子

大芦川~南摩ダム間の導水路

掘削延長上の地山は地下水位が高く、掘削深度での間隙水圧が高い事から、掘削時の水密性が課題となったそうです。そこで「泥水式シールド工法」という、シールドマシン先端に泥水を圧送して、その泥水圧で平衡をとる水密性の高い掘削方法が用いられているそうです。

トンネル内部には、シールドマシンが走行するレールや、掘削時に水密性を確保するための泥水をシールドマシンへ送ったり、逆に掘削土を泥水と共にトンネル外へ排出する為のパイプが配置されています。

将来はこのトンネル内に川の水が流れることとなりますが、その流れの方向は、ダム方向へ自然落下させるだけではなく、ポンプの力によって大芦川方向へ流すことも出来るそうです。

続いて、上流側のダム堤体の施工現場も見学させていただきました。

南摩ダム堤体(上流側)

この南摩ダムは岩石や土砂で堤体を築くロックフィルダムですが、従来と違う特殊な工法が使われています。

従来のロックフィルダムは、堤体中央部に水を通しにくい粘性土などを用いることで遮水性を確保しますが、南摩ダムは「コンクリート表面遮水壁型ロックフィルダム」といって、上流側表面をコンクリートスラブで被覆する事で遮水性を持たせる工法だそうです。

この工法の難しいところは、堤体が沈下変形するとコンクリートスラブが壊れてしまい、遮水性が失われてしまう事です。

そこで南摩ダムでは薄層敷き均し及び、入念な薄層転圧によって十分締め固めて堤体の沈下を抑制する事で、コンクリートスラブの破損を防いでいるとの事でした。

 

盛立部と地山の境界付近

上流側堤体の盛立の進捗は約50%とのことで、ゾーンによって使い分けられている盛立材料の違いによって、様々な色の土が層状に重なっているように見えます。また、地山は上部が硬質なチャート、下部が比較的脆い砥石型頁岩と、岩質の境界がくっきりと確認できます。

盛立が完了した後は、表面にコンクリートが打設されて堤体が完成します。

この日、盛立作業は行われていませんでしたが、一方で目を引いたのは堤体端部付近にずらりと並んだボーリングマシンです。

グラウチングによる遮水工事

これは、下部岩盤をボーリングして薬注を行い、遮水性を高める工事で、いわば「地盤中にもダムを施工」しているようなイメージだと思います。

この計画が始まったのが昭和44年との事ですので、実に半世紀以上の時間が経過していますが、ダム本体の施工自体は令和2年度から始まり、令和6年度に竣工予定だそうです。

文責:株式会社ブラウンワーク 大泉研

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蔵玉トンネル西側入り口

蔵玉トンネル西側入り口

トンネル内の様子
(2022年9月見学当時)

蔵玉トンネル西側入り口

トンネル内の様子 2022年9月
(見学当時)

千葉県の房総半島を東西に縦断する国道465号にある蔵玉(くらだま)トンネルで行われているトンネル拡幅工事の見学会に参加しました。
このトンネル工事の最大の特徴は「一般交通を止めずにトンネルの幅を広げる」というところです。

トンネルの拡幅工事は、通行止めにして行うのが一般的ですが、周辺に迂回路がなく一般通行を止めることが出来ないため、既設トンネルの中に並べられたプロテクターの中を一般車両が通行する事で、一般車両の安全を確保しつつ、その周囲を掘削して拡幅していくという特殊な方法で施工されることになったそうです。

こうした特殊工法への興味もさることながら、今回印象に残ったのは、調査データによる地盤判断の難しさです。

現地は房総半島中部の上総層群大田代層という、「チバニアン」で有名な国本層の南に位置する地層です。

砂岩泥岩互層となっており、事前に実施した弾性波探査の結果では、脆弱地山と見られるデータだったため、切羽の安定性等が課題だったそうです。

蔵玉トンネル付近に露出した地山

 

しかし実際に掘削してみると想像以上に地山が安定していたという事で、工事のご担当者様は砂岩中に含まれる細粒分の働きによるものではないか?といった趣旨の分析をされていました。

当然の事ですが、弾性波探査も、地盤の「ある一側面」を数値化しているにすぎず、それだけで「実際の地盤の力」を評価するのは難しいという事が再認識できました。

 

これを私の実務に置き換えた場合、住宅等の小規模建築物の地盤調査がまさにそうです。

住宅等では経済的な理由等からSWS試験のみで地盤の評価を行うケースが殆どですが、SWS試験で得られる「貫入抵抗値」だけで地盤を評価した場合の「精度」には限界がありますし、可能であれば複数の試験方法を用いて様々な側面からアプローチしてみたいと日々感じています。

 

文責:株式会社ブラウンワーク 大泉研

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先月、福島県・茨城県で産業技術総合研究所が開催した地質調査研修に参加しました。

今回の研修テーマは、地質図を作成するために必要な、露頭での調査技術や、岩石識別方法の習得で、直接目で見ることが出来ない地面奥深くの構造を、地表面に現れた「僅かな一部分」から「推定」していくという手法を学びました。

普段、我々は極々表層の「土」を対象とした調査・試験を行っており、その下部にある「岩石」について学ぶ今回の研修内容が、直ちに我々の業務で活かせるわけではありません。

しかし、体系的な知識習得もさることながら、直接見ることが出来ない地面の中の構造や性質を、限られた証拠から「推定」していくという考え方は、我々の普段の業務と全く同じであり、今回の研修で「推定方法」の引き出しが増えたと感じております。

今後の調査解析業務に活かしていきたいと思います。

↑写真は砂岩の破片にたくさん入っている貝の化石です。化石も、その地層が堆積した当時の環境を

「推定」するための手がかりのひとつ。

 

↑ 指先程の大きさの貝の化石の跡

 

↑ 砂岩中に形成されたノジュール

 

文責:株式会社ブラウンワーク 大泉研

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新築工事を計画されている建築業者様から、

「地盤改良工事の有無や、工事が必要な場合の概算金額を早く知りたい」

との理由で、盛土施工前や、既存建物の解体前に地盤調査のご相談を頂くケースがございます。

そうした際に、私どもが説明させて頂くのは

「 表層部の地盤状況は、建物の安定性を検討する上で大変重要 」ということです。

盛土前の場合、当然の事ではありますが、盛土した部分のデータ自体が存在しません。

また、解体作業では、基礎や浄化槽などを撤去する際に、どうしても表層付近の地盤に乱れが生じてしまいます。

もし、解体前に地盤調査を行った場合、その調査データからは新規建物の地盤性状を正確に判断することは難しくなります。

さらに、一般住宅では、地盤保証をご利用になる場合が多いと思いますが、

事前に調査した測定位置が、最終的な建物配置の四隅から外れ、保証審査の規定外であったりする場合は、

解体後、再び地盤調査を行う必要が生じる可能性があり、経済的な面で無駄が出てしまいます。

 

建築予定地にて、以下の作業を予定されている場合、地盤調査前に、一度ご相談下さい。

■ 建築予定地内で盛土など、造成を行う場合
■ 既存建物の解体が伴う場合
■ 地中内障害物( 杭・コンクリートガラなど )を取り除く場合

予定地周辺の既存地盤データなどを参考にしながら、
改良工事が必要となる可能性の大小や、経済的にムダのない調査のタイミングを提案させて頂きます。

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